Destiny

4/8

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
名古屋駅近くの商業ビルに立ち寄り、夕飯を食べた。掛井さんおすすめの鰻屋で味わったひつまぶしは、最高に美味しかった。 「気象情報によると、今年はホワイトクリスマスになるとか。温暖化の近頃にしては、珍しいですね」 食事のあと、エレベーターの中で彼が教えてくれた。 「そうなんだ。寒そうだけど、クリスマスらしい感じがします」 「うん。ところで夏目さん、クリスマスの予定は?」 「えっ? わ、私は、特に何もありませんが」 エレベーターの扉が開く。 通路の窓からテラスを見ると、雪が降り続いていた。 「そうですか。ご存じのとおり、僕も予定がありません。もしよければ、デートしませんか?」 「デート……します、もちろん!」 掛井さんは、ドライブに行こうと誘ってくれた。私は嬉しすぎて、ひたすらうなずくばかり。 「あと、年が明けたら初詣に出かけるつもりですが……」 「一緒に行きます!」 すぐに反応する私を見て、掛井さんが楽しそうに笑う。でも私は本気で前のめりだった。いつ何時でも彼と一緒にいたいくらいの気持ちなのだ。 「じゃあ、犬山に行きますか」 「犬山……あっ」 すぐにぴんときた。 「神様に、お礼を言いに?」 「そういうこと」 掛井さんとの縁を結んでくれた三光稲荷神社である。私の話を、ちゃんと覚えていてくれたのだ。 「それなら、初詣のあとは城下町を散策しませんか。そのあとは……」 次々に提案する私を、掛井さんは呆れもせず、にこにこと受け入れてくれる。クリスマスにお正月――年中行事に、こんなにもわくわくするのは久しぶりで、浮き足立ってしまう。 「あ、ツリーがありますよ」 タワー前の広場にツリーが飾られている。いくつものLEDで彩られた巨大なツリーだ。掛井さんと一緒に、近くまで行ってみる。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加