72人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕は最初から、夏目さんを可愛い人だと思ってたんです。だから、名古屋城の公園で、雨宿りするあなたを見つけたあの日、すぐに声をかけていました。そして、スマホを失くしてがっかりしたり、見つかって喜んだりする、感情豊かな姿を見て、すごく惹かれました。あれほど胸が高鳴るなんて、驚きです」
「わ、私も、あの日をきっかけに、掛井さんを意識し始めたんです。それからはもう、会うたびに好きになっていくというか……」
「……」
掛井さんが唇を結び、そっと視線をはずした。困ったような、嬉しいような、複雑な表情だけど、明らかに動揺している。掛井さんこそ、可愛い……!
「私の気持ち、バレてたんですね」
「バレるというか、ちゃんと伝わってましたよ。言葉にしなくても……いや、でもやっぱり言葉の力は凄いですね」
私に目を戻し、じっと見つめてきた。
「掛井さんの目力も凄いですよ」
「そ、そうかな」
微笑み合い、どちらからともなく手を重ねた。
窓の外は降り積もる雪。
私たちはしばらくそうして、互いの温もりを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!