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「夏目さんは、運命を信じますか」
帰りの車中で、掛井さんがふいに問いかけてきた。
窓の外は雪が降り続いている。
「運命、ですか?」
「はい。僕は、夏目さんが今そばにいることが、運命のような気がするんです」
日が暮れたばかりの高速道路は幻想的で、どこか別の世界にいるみたいだった。私は心地よい振動を感じながら、彼の声に耳を傾ける。
「あの日、名古屋城の公園で出会ったのは、ただの偶然にしては出来過ぎで、でも誰かが仕組んだわけでもない。あなたを駅まで送り届けるため車に乗せた時、なんとなく感じたんです。夏目さんは、いつか僕の車の助手席に座るんじゃないか。つまり、僕の隣にいてくれるのではと……」
「掛井さん」
夢見ていた光景が現実になって、その上、こんなに感動的な告白をしてくれる彼は何者なんだろう。それこそ、出会うべくして出会った、運命の人に思える。
「すみません。こんな考え方、変ですよね。舞い上がってるみたいだ」
掛井さんが少し気まずそうにする。感激のあまり口を利けずにいた私は、慌てて自分の想いを口にした。
「そんなことないです。運命とかご縁とか、私も信じてますから。えっと……あ、例えば今日、縁結びの神様にお願いしました。掛井さんとの恋愛成就を」
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