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名古屋駅近くの商業ビルに立ち寄り、夕飯を食べた。掛井さんおすすめの鰻屋で味わったひつまぶしは、最高に美味しかった。
「気象情報によると、今年はホワイトクリスマスになるとか。温暖化の近頃にしては、珍しいですね」
食事のあと、エレベーターの中で彼が教えてくれた。
「そうなんだ。寒そうだけど、クリスマスらしい感じがします」
「うん。ところで夏目さん、クリスマスの予定は?」
「えっ? わ、私は、特に何もありませんが」
エレベーターの扉が開く。
通路の窓からテラスを見ると、雪が降り続いていた。
「そうですか。ご存じのとおり、僕も予定がありません。もしよければ、デートしませんか?」
「デート……します、もちろん!」
掛井さんは、ドライブに行こうと誘ってくれた。私は嬉しすぎて、ひたすらうなずくばかり。
「あと、年が明けたら初詣に出かけるつもりですが……」
「一緒に行きます!」
すぐに反応する私を見て、掛井さんが楽しそうに笑う。でも私は本気で前のめりだった。いつ何時でも彼と一緒にいたいくらいの気持ちなのだ。
「じゃあ、犬山に行きますか」
「犬山……あっ」
すぐにぴんときた。
「神様に、お礼を言いに?」
「そういうこと」
掛井さんとの縁を結んでくれた三光稲荷神社である。私の話を、ちゃんと覚えていてくれたのだ。
「それなら、初詣のあとは城下町を散策しませんか。そのあとは……」
次々に提案する私を、掛井さんは呆れもせず、にこにこと受け入れてくれる。クリスマスにお正月――年中行事に、こんなにもわくわくするのは久しぶりで、浮き足立ってしまう。
「あ、ツリーがありますよ」
タワー前の広場にツリーが飾られている。いくつものLEDで彩られた巨大なツリーだ。掛井さんと一緒に、近くまで行ってみる。
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