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掛井さんにスマホを渡して画面を見せた。すると、彼も驚きの表情になる。
「古いアルバムの写真を、写したみたいです」
木曽川と犬山城をバックに、若かりし父と母が仲良く写っている。そして、傍らにあるのは父の車だ。
「掛井さんの車と、似ていませんか?」
「ええ、同じ車種です」
車種が同じなのも驚きだが、問題は車体の色だ。父の車は、掛井さんのセドリックと同じダークグリーン。色褪せた写真だが、それは判別できた。
「僕の車は、元々の所有者がオリジナルカラーを調合して塗り替えたものです。メーカーのオリジナルカラーではない、世界で一つだけの色。ということは……夏目さん」
「は、はい」
「お父さんは、車を修理などが得意ですか?」
掛井さんの言わんとすることをすぐに理解した。
「父は車が好きで、よく自分で修理していました。仕事も機械関係だし、かなり器用なほうだと思います」
「車の色を塗り変えるくらい、朝飯前かもしれませんね」
もう一度、メールを見てみる。
《城の写真をありがとう。お父さんたちも若い頃は愛車に乗って、あちこちの城を見にいったなあ》
《証拠写真を送ります(笑)》
「もしかしたら、掛井さんの車の、元々の所有者って……」
「間違いない。夏目さんのお父さんですよ……!」
「やっぱり……えっ、あの?」
彼が私の手を取り、ぐいと引き寄せる。
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