72人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、夏目さん、サンキュー。さてと、楓屋さんの新商品、いただきまーす」
お茶が来るまで待っていたようだ。安田さんが小箱の蓋を開けて、和菓子を食べ始めた。
「掛井さん。よろしければ、お茶をどうぞ」
テーブルの端で控えめに座る彼に、お茶をすすめた。
「あっ、すみません。ありがとうございます」
目をくるっとさせて礼を言う。彼がかわいい男性であることを再認識して、私は心の中で身悶えした。
「で、なんだっけ。そうそう、掛井さんがクリスマスにどうするかって話。ねえ、どうやって過ごすの?」
安田さんは執拗だった。そこまでプライベートを聞いてもいいのだろうかとハラハラした。もちろん、彼のプライベートに興味はあるけれど。
「そうですねえ。午前中は部屋の大掃除をして、午後はドライブに行くくらいかなあ」
ドライブ。
彼の言葉に、私はハッと顔を上げた。
「へえ、そんな趣味があったんだ」
「お休みの日は、結構、あちこちに出かけるんですよ。車が好きですし」
素晴らしい趣味だ。私は嬉しくなり、彼のハンドルを切る仕草を、まじまじと見つめた。
「ふふん、私も車にはちょっとうるさいわよ。どんな車に乗ってんの?」
「ステーションワゴンです」
「はあ?」
安田さんが突然、けらけらと笑いだした。
私もみんなも、何が可笑しいのか分からず、反応のしようがない。
最初のコメントを投稿しよう!