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日付が変わって一時間。
それまでに何回か携帯にメッセージを送った。
〈何時頃帰る?〉〈終電乗れそう?〉
ユウくんが飲み会の時は、いつも確認する。
今までの経験上、このメッセージに返信がないのは危険信号なのだ。
やばい。これはまた、めんどくさいやつだ。
そう思っていたところに、携帯が着信を知らせる。
嫌な予感しかしない。無視してやりたい。
でも万が一、何かあったのかもという心配がよぎるので渋々手に取る。
「……もしもし」
「あーっ沙耶ちゃ〜ん、やあっと出てくれたあ」
やっとって、鳴ってから十秒しか経ってないし。
携帯の向こうからは、ケラケラ笑って明らかに酔っている声がする。
「ユウくん、今どこ?」
「いま〜?えっとね〜……なんか電車寝過ごして〜。ここ、どこだ〜?」
どこだ?って知るか!
こっちが聞いてるのよ。
「あ〜、大月駅って書いてある〜。沙耶ちゃん、迎えに来て〜」
「はあ?なんでよ。自分で帰っておいでよ」
「んとね、鞄どっかに忘れちゃったみたい〜。だから財布もないの」
「はあ⁉︎」
ヘラヘラと携帯越しに聞こえる声に、思わずこちらが声を荒げる。
乗り過ごすのも悪いけど、鞄忘れたって!
「だからね、財布もないし〜、ここ真っ暗だし、タクシーで帰るには遠すぎるし」
「どっか泊まれそうなとこ、ないの?」
…………
「ちょ、ちょっと!ユウくん?」
反応がない。
「もしもーし!ユウくん!」
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