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転校生
騒がしい休み時間。そのクラスの賑わいに混じることも出来ずに、木下冬馬は、窓際の席で本を閉じ、小さく息を吐いた。
そして窓の外を眺める。特に何があるって訳でも無いが、暇を潰すのにはちょうどいい。今日の天気は良く、時折吹き込む優しい風が心地良かった。
別に誰とも話せない訳では無いが、大声で騒ぐほど親しくも無い。こんな中途半端な時期の転校だから仕方ないことのようにも思える。
冬馬は賑やかなタイプて無いし、普通だ。前の学校では、どちらかというと賑やかなグループにいたけど、転校して来た冬馬を受け入れてくれた彼らは、人によっては陰キャと分類されるのかもしれない。
◇
園田美優は、友達たちの会話の間に、チラリと窓の方を盗み見た。
今日も転校生くんは、なんだか難しい本を読んでいる。その横顔が知的に見えた。
「どうしたの、美優?」
友人の江嶋遥香の声に、美優は
「え?いい天気だなって。」
と誤魔化した。
「何?おばあちゃんみたいなこと言って。」
と、その場にいた友人達が笑った。
美優は何故か転校生の木下くんが気になっていた。男女関係なくよく話すクラスだけど、木下くんは一人でいることが多い気がした。そんな一人でも、ぼんやりと丁寧に過ごす姿に何故か気になって、気が付けば目で追ってしまう。
かと言って、クラスで話し掛けることは無い。彼がいつも話す人達と、私がいつもいる友達は少し違う気がする。
なんとなくバレてはいけない。そんな風に美優は感じていた。特に自分の友達には。
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