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2 ☆ ☆
事件現場周辺に設置された防犯カメラの映像は現在解析中だ。解析を任されているのは重尾の後輩だと高橋は言った。
「大瀧ですか」
「ああ、あいつも一人前にならんとな」
高橋は少し笑った。
重尾も、大瀧が以前起こした騒動を思い出して笑った。
改正テロ対策法により、警察は令状なしで公道や公共施設、商業施設に設置されている防犯カメラの映像にアクセスできるようになった。
警察の権限が強化されたわけだが、それを面白く思わない組織があった。交通管理局だ。交通管理局は公道上に設置したウェブカメラを用いた旅行時間測定システムによって交通量の整理を行っている。道路上に設置されたカメラ映像を扱う権限を持っていた。その他、鉄道、駅構内のカメラも交通管理局の管轄だ。
それを頭越しに全て警察に持っていかれるようになったのだ。面白いはずがない。また、画像の解析に関する技術も管理局のほうが上だ。
そこで、警察のほうから若手を出向させて組織の融和と技術協力を仰いでいる。その重要な役割に抜擢されたのが大瀧だったのだが。
大瀧は、そのことが不満だった。
せっかく大瀧のために開いてくれた歓迎会で、
「俺はこんな覗き魔の集まりみたいなところで仕事をしたくない」
とぶち上げた挙句、酔っ払ってつぶれ、先輩の職員に担いで連れ帰られたのだ。
そんな失態を晒して、今ではおとなしくしているらしい。
「大瀧、元気にやってますか」
「ああ、だいぶ使えるようになってるらしいぞ」
「キステロは映ってるでしょうか」
重尾は恐る恐る聞いてみた。
「防犯カメラには無理だろう。誰かが仕掛けたカメラでもあればいいんだがな」
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