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重尾は思わずシラユキを見た。シラユキは重尾にほほ笑んだ。むせかえるようなスノウホワイトの香りと、シラユキのほほえみ。重尾は、自分がどこにいるのかわからなくなってしまった。
「もうすぐつきますよ」
ホレさんの農場は坂道をひたすら上っていった先にある。すぐそばにはパラグライダーの滑走路がある。
車から降りて外の空気を吸うと、重尾の頭は一瞬でクリアになった。
シラユキは、車から降りると重尾の手を引っ張って駐車場の端に連れて行った。
「見て! めちゃくちゃ景色いいんだよ」
駐車場からは、湯府市が一望できた。町のところどころから温泉の湯気が上がり、坂道をたどると海に行きつく。海は紺碧。空の色と一体化していて、白いフェリーが空を飛んでいるように見える。
「うわ。すごくきれいだ」
重尾も感嘆の声をもらした。
「でね、あそこがあたしの家だよ」
シラユキは、坂道の真ん中にあるビルを指さした。
「ホレさんとこは、町が全部見えるけど、うちの屋上からは海がとってもきれいなんだよ。もうね、一面海と空だよ」
「へえ、いいなあ。俺も一緒に見たいな」
「ほんと?来る?最高だよ」
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