重尾

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重尾は頭に叩き込んでいた供述調書を暗唱した 「2時間目終わりの10分休み、10時30分過ぎです。実習で使用した薬剤と剪定ばさみなどの用具をキャスターに積んで薬品庫に向かっていました。校庭に面した渡り廊下を通っていたところ、山田サラが私を見つけて話しかけてきました。ちょうどその時上空をパラグライダーが飛んでいました。山田サラが、私も飛びたいと言ったので、休日に予約をいれてみたらいいよと答えました。 山田サラは校舎に戻ったようだったので、私はそのまま薬品庫に薬剤を保管し、薬品仮簿に記載して、残りの用具を倉庫に入れようと渡り廊下に戻りました。 校舎から悲鳴が聞こえたので、そちらを見ると、山田サラが教室の窓から身を乗り出していました。山田サラはそのまま転落しました。」 「ふふ。その調書のために随分長いこと拘束されましたよ。僕と山田サラに男女の関係があったと思いたかったみたいですね。確かに一番話が早い」 「ええ。でもそうではなかった。山田サラが桐島先生につきまとっていて先生が気の毒だったとたくさんの教員、生徒が証言しました。他害の形跡もなく、発作的な自殺であると断定されました。だいぶセンセーショナルにとりあげられましたね」 「ええ。校舎内での自殺ですから。いじめがあったんじゃないかと学校帰りの生徒に付きまとうあなたみたいな人がたくさんいましたね」 「すみません。ちゃんとお伺いするつもりだったんですよ」 「でもどうして今さらなんですか?あれは自殺と断定されたのに」 「先生は、本当に自殺だと思ってるんですか? 山田サラは、自殺するような生徒でしたか?」
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