重尾

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「なんだか、現実感がなかったんです。男はあっという間にいなくなってしまって、僕は山田サラに駆け寄りました。山田は、ぼんやりしていました。何の音も光も感じていないような顔をしていました。三回くらい体を揺さぶって、やっと彼女は正気に戻りました」 「山田サラは何と言っていましたか」 「それが、山田は何も覚えていなかったんです。本人は、ふらふら散歩をしてただけだって言ってました・・・僕も、どうも現実味が持てなくて。男があまりにもきれいすぎたし、山田も、そんな簡単に男とキスをするような子じゃない。彼氏もいなかった。夢なんじゃないかって気までしてきました。でも・・・」 「でも?」 「いたんです。山田サラが飛び降りたあの日、やじ馬に交じってあの男が。まるで見届けに来たみたいに」 「その話を誰かにしましたか?」 「・・・いいえ。取り調べは、最後に山田と何をしゃべったのか、山田と特別な関係はなかったのか、そこばかりでしたから。取り調べの間、あの男のことなんて思い出しもしませんでした。やっと家に帰れて、思い出した時には、何が現実で何が夢なんだか。。。」 「ありがとうございます。貴重なお話がいただけました」 「何か、役に立ちますか」
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