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「ええ。きっと」
重尾はにっこりと笑った。二人は連絡先を交換した
「重尾・・・大樹さん・・。すみませんね、学校の職員って名刺を持たないんです」
「いえ、大丈夫です。その気になったらいくらでも調べますし」
「こわ」
やっと二人は笑いあった。
「重尾さん、これからどうします? 僕は6限に実験が入ってるんで昼めし食ってから学校に戻ろうと思ってますけど、一緒にラーメンでも食べませんか。」
時刻は正午になろうかという頃合いだった。近くに異常に速くてうまいラーメン屋があるという。
「うれしいな。おいしい店とか全然わからなくて困ってたんです。でもすみません、農場で、何か相談があったんでしょ。中断させてしまいましたね」
「ああ。フラワーフェスティバルの打ち合わせだったんですけど。大丈夫です。後はプランターを入れてもらうだけですから」
「プランターを?」
「ええ。毎年、フラワーフェスティバルではうちの学校が花のプランターを町中に置くんです。期間が終わったら地元の人や観光客に持ち帰ってもらうこともあります。今年はほら、海外のお客さんも来るから、いつもよりたくさん作るつもりだったのに、こんなことになってしまって。何の準備もできなかった。今年は無理だと思ってたら、ホレさんが、うちの苗でよかったらどうぞって言ってくれたんです。だから、学校の名前入りのプランターに、ホレさんの農園の花が植えられてるっていう、まあ、詐欺みたいな感じになっちゃってます」
「いいじゃないですか。バレなきゃいいんです」
「ですよね。バレなきゃオーケー」
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