シラユキ

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シラユキがしょんぼりと『ニエベス』の三階に戻ってくると、廊下にチャーハンのにおいが漂っていた。シラユキたちが暮らしている部屋の一番端は空き部屋になっていて、そこでリュウセイは気が向いたときにチャーハンを作ることがあった。 「リュウセイ、ただいま」 「お、飯食うか?」 「うん。濱井さんがお弁当買ってくれたんだけどさ・・」 「それも食えばいい」 「うん」 二人は小さなテーブルに向かい合って出来立てのチャーハンを食べた。 「マドレは?」 「さっきお前の兄ちゃんが来て、二人ででかけた」 「えーーー。なんで? 待っててくれなかったの?」 デートなんだよ、とリュウセイは心の中でつぶやいた。シラユキに、「デート」の意味を理解させる自信がなかったので、口には出さなかった。俺たちは、あまりにもシラユキにものごとを教えてこなかった。 シラユキは殺人の技術以外何も身につけていない。そんなシラユキを、俺は背負えるのだろうか。 「お兄ちゃん会いたかったなあ」 「お土産あずかってるぞ」 「なになに?」 「おすすめのゲームだってさ」 「ありがとう」 ゲームのソフトを受け取ると、シラユキは食べた皿を洗ってから部屋に戻った。 リュウセイはアイコスで一服した。ホレさんから、農場で起きた出来事の連絡は受けていた。 あの男はただの恋敵では済まないようだった。 どうする? どうなる?  「まあ、どうにかなるかな」 「リュウセイ! リュウセイ!」 シラユキが呼ぶ声がする。 「どうした。」 「このゲームめちゃくちゃ難しい!」 と、シラユキがコントローラーを投げてきた。 「貸してみろ」 受け取ったが、なかなか難しいゲームだ。 「駄目だこりゃ。お兄ちゃんに教えてもらえ」 「リュウセイも下手くそだね」 笑ったシラユキの唇にキスした。シラユキが少し驚いた。 「仕事以外でするって珍しいね」 「いつしたっていいんだよ」 そう言うとリュウセイはもう一度キスした。
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