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ズキズキする頭を抱えて独り言を言っていると、スマホが鳴った。神山からだった。
「目が覚めた?」
「昨日はすみませんでした。いろいろひどいことを言いました。」
「それはどうでもいいよ。俺たちも言われ慣れてるし。それよりも、だらしない飲み方はするな。俺たちは他人の情報を自由に扱える仕事だろ。プライベートでも第三者につけこまれるような振る舞いはできない。スマホと財布の管理なんて最低限のことだ。覗き魔みたいな仕事だからこそ、自分に矜持を持たないと堕落するぞ」
返す言葉もなかった。同時に大瀧は交通管理局とこの先輩の事が好きになった。
めちゃくちゃかっこいい。
管理局にいる間は、この先輩についていこう。
解析が終了した午後、大瀧は県警に正式報告に向かった。結果はデータで送信していたが、一度顔を出せとのことだった。
県警の高橋さんは上機嫌だった。
「短時間で結果を出したな。たいしたもんだ。お前を送った甲斐があった。」
「ありがとうございます。」
俺は褒められたら伸びるタイプなんだよ。この人分かってるなあ、と心の中で大瀧はつぶやいた。
「確かに、固定された死角だけじゃなくて、その場その場で発生した死角も巧みに利用しているな」
「そう思います。誰かがカメラの映像をもとに指示を出しています」
「大瀧」
「はい」
「現地に行ってこい」
「え?」
「あっちに重尾がいる。同期だろ。交通局には話をつけておく。合流してこい」
「了解です」
久々の現場だ。大瀧はわくわくした。
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