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「え、、、と」
どう説明しようかと、桐島は頭の中がごちゃごちゃになってしまった。
「僕から質問していいですか。このふたは、山田サラさんの持ち物だったんですか」
「いえ、違います。これは、農場に落ちてました。5月にホレさんって方の農場で実習をして! その時に男がいて! 山田サラが」
「落ち着いて。ゆっくりでいいです」
中田は桐島の手を握り、なだめた。口元にはやわらかい笑みを浮かべている。桐島は椅子から腰を浮かせて立ち上がりかけていたが、また椅子に座った。
「コーヒー、もう一杯入れますね」
再び応接室にコーヒーの香りが満ちた。
「ミルク入れますね。そっちのほうが落ち着きますから」
「ありがとうございます」
「山田サラさんは、実習先で何かトラブルに巻き込まれたんですか?」
「・・・男と、キスをしていました」
「彼氏?」
「たぶん違います。見たことのない、背の高い、きれいな男でした。その時、山田の様子がおかしかったんです。目がうつろで・・・正気に戻った後は、男のことも覚えていませんでした。僕も、そのままにしていました。でも、山田が窓から飛び降りたとき、やじ馬の中にあの男を見つけたんです」
「その男が何かしたんでしょうか」
「いいえ。引き金を引いたのは、たぶん、僕です」
「え?」
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