濱井

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濱井

本日の『ブランカ・ニエベス』の営業は午前中まで。午後はホレさんの農場で仕事が入っている。濱井は軽トラックを運転して、農場についた。明日から開幕するフラワーフェスティバル用のプランターを湯府総合高校まで運ぶ仕事だ。プランターには湯府総合高校の名前と校章が入っている。 例年ならば高校の農場で育てられた花がプランターに植えられる。しかし今年は事件のせいでごたついている間にビニールハウスの温度管理に失敗し、花が育たなかった。だから、ホレさんが、農場で余った花を提供してくれたのだ。 サラちゃんも、かわいそうだったなあ、と濱井は思う。実習の時、浮いていたのは見ていて分かった。でも、命を捨てるほど気に病んでいるとは。 あの時たまたま接した自分でさえ思い出すと悲しい気持ちになる。ましてや毎日のように接していた桐島先生は本当につらいだろう。会うたびに痩せているのが気の毒だった。 フラワーフェスティバルが終わったら、飲みにでも誘うかなあ。うん。そうしよう。 農場についた。 駐車場の隅に、プランターが並べられている。 「こんにちはー」 声をかけるとホレさんが出てきた。 「濱井君、よろしくね」 「ホレさん。花を植えるところまでしてくれてたんですね。大変だったでしょう。俺、そこからやるつもりだったのに」 「ははは。手伝ってくれる人がいたからね。運び出し、お願いね」 「了解です」
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