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中田
中田は、桐島とのやりとりをリュウセイに伝えた。リュウセイから、桐島を元町通りのカフェに誘導してもらえないかとメールで依頼が来た。
あのカフェか、と中田は暗い気持ちになる。なりながらも、桐島に電話を入れた。例のふたについて、気になる点があるので会って話がしたい。研究所には機器のメンテナンス業者が来ているのでできれば外で話がしたい。お見せしたいものもあるから僕の行きつけのカフェで会えないだろうか。
そんな趣旨の話をした。桐島は快諾してくれた。
「ふう」
ため息をついてから、リュウセイに電話を入れた。
「連絡したぞ」
「すみません」
「リュウセイ君、君は何がしたかったの?」
「・・・俺一人でもやれるか、試したかったんです。ユキの動画が出回ってるのは知ってるでしょう。このまま続けるのは危険だって思いました。だから・・・」
「女の子ならいけると思ったの?」
「はい」
「お試しで飛ばすつもりだったのか?」
「あの農場、段々畑になってるから、下の畑に飛び降りたところで足首ひねるくらいのことですよ? なのに、あの子は飛ばなかった・・・」
「で、桐島先生から『飛んでみなよ』と言われて飛んだのか・・・」
「はい。俺が言葉をかけた直後にあいつが割って入ってきたのも、まずかった気がします」
「後の祭りだ。考察しても始まらない」
「はい・・・・あの・・・テプラ、買ってもらっとけばよかったですね」
「あほか。切るよ」
「はい。こっちも準備できたんで切ります」
スマホをデスクの上に置いた後、中田はソファに深く腰掛けて目を閉じた。
準備ができた、か。
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