中田

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リュウセイの言葉ではなく、桐島の言葉に反応したという女子高生は、きっと桐島のことが好きだったんだろう。あの花の成分は用いた人の心理状態によって効き目が大きく変わる。 もしもあの場に桐島が居合わせなければ、サラという女子高生は段々畑から飛び降りて足首をねんざするだけですんでいたかもしれない。 桐島の言葉が、山田サラを殺した。 これは、真実だ。 僕がスノウホワイトから作った薬で、たくさんの人が飛んだ。 これも真実だ。 そして。  僕の電話が、桐島を殺す。 まもなくそれも真実になる。 僕は、桐島先生の死など望んではいない。僕が作った薬のせいで飛んだ人の中で、死を願った人など一人もいない。 でも、僕はそれに加担をした。 何の実感もなく、僕はたくさんの人を殺した。そして僕は、故郷で失った人々の死もまた、何一つ実感できないまま17年も生きてしまった。僕が日本にホームステイしている間に無惨に殺された家族、友人・・・ 僕は何のために生きてきたんだろう。
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