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キステロ
学校に向かうかと思われた桐島の車は、思わぬ場所でUターンした。
「シゲ、お前のメールには、学校が終わったらって書いてたんだよな」
「そうだよ」
「どこにいくんだ?」
重尾と大瀧には、まだ湯府市の十分な土地勘がない。脇道に入っていった桐島を見失ってしまった。
「電話してみよう」
重尾は桐島のスマホに電話をかけた。
「くそ、走行中は出ないタイプか」
もう一度コールしようと思ったときに、返信があった。
「すみません、車運転してたんで、出られなくて。どうかしましたか」
「いえ、6時過ぎに学校ってことだったんで、近くで待ってた方がいいのかなって思ったんで。時間つぶすのにいい場所ありますか?」
「あ、急用ができて、今学校にいないんです」
「そうなんですか。じゃあ、今日はお会いできないですか?」
「いえ、人と会う用事ができただけなんで、それが終わったら話しましょう」
「お友達ですか?」
「ええ」
桐島は言葉を濁した。中田の名前をうかつに出すのはためらわれた。警察に疑いをかけられたときのきつさはよく知っている。重尾には、中田の話を聞いて、きちんと整理してから伝えよう。
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