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「お前、どうしたんだ」
リュウセイが食い気味に聞いてきた。
「えっと・・・散歩」
「散歩! うそだろ」
「・・・なんとなく、歩きたくなって」
シラユキは口ごもった。今までリュウセイに隠し事をしたことはなかったけど、さっきの出来事はしゃべりたくなかった。何となくだけど、リュウセイは喜ばない気がする。多分リュウセイは、寝ていたから何も見ていないだろうし。
「ユキちゃんだって、散歩くらい行くよな。なんなら俺が連れてってやろか」
濱井さんがのんびりした口調でいう。
「ほんとに?」
リュウセイがいらいらした声を上げた。
「あんたは関係ないんだから口挟んでくんなよ」
「関係あるしー。お前とは仕事仲間だしー。ユキちゃんとはお友だちだしー」
「マジうるせー」
リュウセイが大きな声を出したので、シラユキは思わず首をすくめた。
「おーこわこわ。あ、俺、この後また配達行ってくるから」
濱井さんは笑いながらシラユキの頭をポンと叩き、奥に引っ込んだ。駐車場に止めてあるお店の車に、花をたくさん詰め込んで、鼻歌を歌いながら配達にいくのだ。
「いってらっしゃい」
シラユキが声をかけると
「おう」
と振り向かずに声だけで返事をした。
濱井さんはいつも機嫌がいい。なんだか安心する。リュウセイは、あいつはアホなだけだという。リュウセイは時々機嫌を悪くしてるから、そのぶん頭がいいってことなんだろうか。今もめちゃくちゃ機嫌が悪い。ちょっと嫌だ。
シゲはどうなんだろう。シゲも時々怒ったり機嫌悪くなったりするんだろうか。
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