奪還 2

3/10
前へ
/189ページ
次へ
濱井から無理やり提供させた軽トラックで、高橋と大瀧は県警で調達してきた備品とともに『ニエベス』に向かっている。『ニエベス』しか、手がかりはなかった。 大瀧と高橋は、どういうルートで侵入するか相談している。 「濱井のスマホに連絡が来ていたな。『店は臨時にしめているから、車を駐車場に止めてそのまま帰ってください』だとさ」 「はい。」 「重尾が現れて、動揺しているんだろう。つけ入る隙があるともいえるし、突発的な事案が起きるかもしれん。迅速に、かつ冷静に。一番難しいやつだ」 「どうしますか」 「ちょっと止めろ」 高橋は、車をコンビニの駐車場に止めさせた。タブレットを立ち上げると、いくつかの画面を大瀧に示した。 「ニエベスの周りにある防犯カメラの映像すべてだ。あいつら、自分たちが見る側だと思ってるが、本来俺らの仕事なんだぜ。その気になりゃーこっちが国家権力なんだよ、と。ほら見ろ、慌てふためいていただけある、隙だらけだ」 「隙、あります?」 「よく見てみろ。ここの外階段。二階の扉が少し開いてる。ここから入れるぞ」 「俺、行きます」 「頼む」 高橋は、ピンマイクタイプの無線機と防弾チョッキその他を小瀧に渡した。 「装備品だ。確認しろ。やつらはこの車が駐車場に止まることには警戒しない。すばやく入りこめ。ヤバくなったら無線で呼べよ。俺が車ごと花屋に突っ込む」 「了解です」 車を駐車場に止めた。大瀧は高橋さんの教えてもらった防犯カメラの死角を狙いながら一気に外階段の二階まで駆け上がった。スニーカーでよかった。革靴だったら反響する音で心臓が縮んだだろう。 扉を最小限開けて滑り込む。通路を挟んで寂れ果てたスナックが二つ。大瀧は目が慣れてくるまで身を伏せていた。正面に監視カメラが一つ。見られていたらアウトだ。その時は高橋さんに突っ込んでもらおう。 しばらく身を潜めていたが、隅の暗がりに身を潜めていたが変化はない。監視カメラをつけてはいるが、ここに何かが侵入してくることは想定していないようだ。通路に木箱やら掃除用具入れやらが乱雑においてあるから身を隠す場所がある。 大瀧は動き出した。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加