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「大瀧、大丈夫か。顔色悪いぞ」
高橋が声をかけた。
「あ、大丈夫です。ちょっといろいろありすぎて」
「確かにいろいろありすぎたな・・まあ、これで決着がついた」
「・・・はい」
高橋のスマホに連絡が入った。電話を受けた高橋は怒鳴り始めた。
「おい、どういうことだよもぬけの殻って。非常線張ってたんだろ」
大瀧は思わず立ち上がった。高橋は大瀧にも聞こえるようにスピーカー機能にしてくれた。
「逃走に使われたワゴンは非常線の手前で乗り捨てられていました。防犯カメラの隙をついて逃走したと思われますが、足取りは全く不明です」
「どっか、隠れ家でもあるんだよ。探せ。それと、絶対見てるやつがいるからな」
見てるやつって、神山さんじゃないよな。そんなはずない。
でも・・・
スマホ越しにまくし立てていた高橋は、小瀧がふらっと歩き始めたことに気が付いた。
「どうした?」
「すみません。ちょっと顔洗ってきます」
小瀧はそのまま病院を抜けた。客待ちのタクシーに乗って、交通管理局に向かった。もしも、管制室に神山先輩が一人でいたら?
ぞっとする。そんなことがあるはずがない。あれは、先輩がきちんとしたルートで手に入れた権限に違いない
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