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地下室の片隅に、弾薬が入った箱が積まれている。その陰に隠れて、二人はキスをした。リュウセイの唇は渇いていた。少し震えていた。シラユキは渇いた唇を優しく噛んで、首に腕をまきつけた。
今までたくさんリュウセイとキスをしてきた。でもこのキスは違う。リュウセイは、私のことが、好きなんだ。
私は?
閃光弾の残像の向こうに、シゲの顔が浮かぶ。シゲの、笑顔。この人にはいつまでも笑っていてほしいと思った、あの笑顔。
分からないよ。シゲ。
リュウセイは唇を離してシラユキを抱きしめた。
「大丈夫。どうにでもなる。どこにだっていける。俺が連れていく」
地下室には、重たい沈黙が満ちていた。気づかれたら、終わるのだ。
そんな中、神山が帰ってきた。
「外はめちゃくちゃ警官がいる。かわしてガレージに入るのも大変だった」
青ざめた顔でそう言った。
「動けそうか?」
ボスが聞いた。
「今は無理だ。でも、店の中は撤収してる。外に逃げたと思われてる」
ふう、、と、全員から安どのため息が漏れた。ボスが言った。
「明日になったら外で張っている連中もそれどころじゃなくなるさ。みんな、少しでも体を休めておけ」
「お兄ちゃん」
「シラユキ、怖かったな」
その言葉で、シラユキは泣きそうになる。本当に、怖かった。お兄ちゃんが来てくれたから、もう大丈夫だ。
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