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フェスティバル
夜が明けた。
神山はタブレットから市役所のネット掲示板に入り込んで、フェスティバルの詳細日程を確認した。
「パレードは中止だ。コンベンションセンターでのイベントのみ行う」
コンベンションセンターとは湯府市のイベントホールだ。そこのセレモニーホールで地元の高校生からの歓迎を受けることになっていた。
「奴がターゲットだと、気づかれたわけだな」
「そうだね。でもまだ半信半疑だ。肝心の要人が、まったく気にしていないようだ。できるだけ日程を消化したい、地元の人と交流したいと要望している」
「ふん。相変わらずパフォーマンスが好きな野郎だ」
ボスが吐き捨てるように言った。
神山は画像を切り替えた。湯布市の地図が表示される。あちこちに緑に光るドットが表示されている。交通局のモニターに似ているが、ドットの位置は湯府総合高校のプランターが設置されているところだ。
「コンベンションセンターの周りにもずいぶんあるね。中にも置かれてる」
その場にいた全員が、画面に注目した。プランターの一つ一つに、小型のプラスチック爆弾とGPSが仕込まれている。ホレさんが、花と一緒に埋め込んだのだ。
神山がドットをクリックすれば起爆する。
エイドリアン・ガルシアの訪問が決まったときは、単純に銃で襲撃する予定だった。それがリュウセイのイレギュラーな行動のために思わぬ武器を手に入れることができた。
「で、どうするの?」
神山はボスに聞いた。
「まだネットワークに侵入できるのか。嗅ぎつかれそうだといっていたが」
「嗅ぎつかれたけどね。大丈夫。今日明日くらいならバレないと思う。実行する?見送る?」
「次は、ないわね・・」
マドレは言った。
「ないな」
ボスも答えた。
「プランターはいい位置に置かれてるよ。コンベンションセンターのエントランス、中央ホールの入り口。タイミングを見計らえば、爆発させるだけでもダメージはあると思う。」
「死ぬの?」
マドレは聞いた。
「無傷ってことはあり得ない。わざわざリスクを冒して突入しなくてもいいんじゃないかな。みんなが中にいると、かえって爆発させにくい。」
「トモヒロ、俺たちはそれじゃダメなんだ。あいつが死ぬところを直に見たいんだ。分かってくれ」
「私も、見たいのよ」
「・・・わかった」
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