フェスティバル

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「搬入口の警備がバタついてる。一般のお客さんが逃げようとしてるから、そこに紛れ込んだら中に入れるよ」 神山の声がした。 お兄ちゃんの声を聞いて、シラユキは安心した。そばにリュウセイがいるけど、いつもと道具が違うのが怖かったのだ。銃の扱い方は確かに練習した。でも使ったことなんてなかった。 また、お兄ちゃんの声がした。 「SPと警備が増えてる。気を付けて」 「そのまま中央ホールまで行って。みんなが通過したらエントランス周りのプランターを爆破する」 「了解」 中に入ってしまえば銃を隠す必要がない。全員、銃を構えながら進む。リュウセイは必ずシラユキの前に立っている。  警備員と鉢合わせした。ボスはためらわずに撃ち殺した。明るい光の中で、至近距離で、ヒトが血を吹きながら沈んでいくのを見たのは初めてだった。瞬きをする暇もなかった。 「見るな。行くぞ」 ハッとして、シラユキはリュウセイの後をついていく。 「ゴーグルつけて。ホール周りのプランターを爆破する。閃光弾のお返しだよ。そのあと突入してくれ」 ゴーグルを装着して数秒後、ホールの入り口周辺が吹き飛んだ。突入したボスやジョゼたちは、SPや警護の警察官を次々に撃ち殺していく。 リュウセイは気づいた。こいつらは、この先なんて考えていない。ここで燃えつきるつもりだ。冗談じゃない。要人をやって、さっさと退場するぞ。俺はこの先をユキと生きるんだ。 ホールの隅で震えている女子高生。彼女を背に守りながらこっちを見ている警察官と教師と思われる男。要人はどこだ。
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