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3 ☆ ☆
シラユキは自分の部屋に飛び込んで、クローゼットを開けた。仕事着に着替える。
濃いグリーンのフレアパンツに白いシャツ。シャツはインしろ、とリュウセイに言われたからそうする。メイクはSNSに上がっていたモデルのやり方を参考にしている。街の景色に溶け込むための迷彩が、シラユキの仕事着だ。
クローゼットに据え付けてある姿見で全身を確認してから一階に降りると、リュウセイが待っていた。シラユキの姿を見て、オーケーを出した。
「いいじゃん」
「ほんと?」
リュウセイは、カーゴパンツにグレーのTシャツ。無駄に女子の目を引かないように、少しダサめにしている。目立ってはいけない。
「いこうか」
リュウセイはそう言って、花屋のバックヤードのさらに奥に向かった。そこには運搬用の段ボールや保水用のスポンジなどが乱雑に置かれている部屋がある。
整理整頓の行き届いていない、乱雑な部屋だ。
壁はウッドパネルでモザイク模様に装飾されている。厚みや色味、木目が違う様々な正方形のウッドパネルを貼り付けた壁だ。ホームセンターで買ってきた木材を使っててDYIした感じがする。
でも、パネルの特定の場所を押すと、そこがへこんでかちりと音がする。
ウッドパネルは秘密の扉を隠すための装飾であることが分かる。何の特徴もないけれど、リュウセイとシラユキは目をつぶっていてもその場所を押すことができる。
扉が開いた。
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