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お兄ちゃん、お兄ちゃん。シラユキはさっきからずっと呼んでる。
でも、振り向いてくれない。気づいてくれない。
マドレ、マドレ。マドレの事もずっと呼んでいる。大丈夫？苦しい？水持ってこようか？そう言いたいのに、答えてくれない。
みんな死んだよ。リュウセイが死んで、ボスも死んだよ。最初に死んだのは警備員さんだったよ。あんな風に人が死ぬのは見たことがなかったよ。逃げるときに、ユキちゃん、て呼んでくれた人がいたけど、あれはたぶん濱井さんだったよ。なんであんなところにいたんだろう。もしかしたら、撃たれたかもしれないよ。
ねえ。こんなことになるって、知ってたの？ 知っててリュウセイを連れて行ったの？ いろんな人を撃ち殺すって、知っててお兄ちゃんは指示を出したの？
あの男の人は悪い人だったの？ 悪いのはあの人と？ 他には？ 他にあそこにいた人たちは、みんな悪い人だったの？
ねえ。
私が今までキスをしてきた人も、みんなあんな風に死んでいったの？ 違うよね。あんな死に方してないよね。飛んだだけだよね。
ねえ、飛ぶってどういうことだったの？
ねえ。答えて。なんでリュウセイは死んだの？ なんでシゲがリュウセイを撃ったの？
シゲが警察だから？ 私たちが、悪いことをしていたから？
私は、悪いことをしていたの？
誰も答えてくれない。
二人ともシラユキの事を振り向きもしない。そこにシラユキがいることを忘れてしまっているようだ。
何よりも怖いのは、あんな怖いところからやっと逃げてきたのに、二人はもっともっと怖い顔をして、怖いことを話している。
ねえ。どうして。なぜそんな怖い顔をしているの？
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