フェスティバル

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 セレモニーホールから銃声が消えて硝煙が晴れても、何一つ終わってはいない。ここで何が起きたのか、知っているのは死体だけだ。突入者の死体が五つ。SPや警護の人間の死体が五つ。要人の死体が一つ。巻き込まれた人の死体が一つ。 逃げ延びた人間が少なくとも二人。大変な失敗だということだけが分かる。でも、何に対する失敗なのか、まるで分らない。重尾は、爆発の衝撃を正面から受けてしまい、胸の激痛で一瞬意識を失った。痛恨事だ。シラユキを見失った。  重岡は、高橋が怪我人の救助活動をしているのを確認し、無事であることに安心すると、そのまま黙って現場を立ち去った。  シラユキに会わなければならない。ここでもたもたしていたら、次に会うのは逮捕されているときだ。そうなる前に、会いたい。  これは衝動だ。全く合理的な判断ではない。そんなことは分かっている。でも、まだ、何の烙印も押されていないシラユキに、会いたい。 『ニエベス』に、行こう。  
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