フェスティバル

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 ニエベス周辺は静かだった。黄色い規制テープは張られているものの、人の気配はない。重岡はテープをくぐって中に入った。花屋の入り口からバックヤードに向かう。 段ボールや発泡スチロールが散乱している。その中に銀色の大型の冷蔵庫があった。重尾が冷凍庫の扉を開けると、たくさんの花が雪崩を打ってこぼれ出てきた。その奥に大瀧がいた。かくれんぼをしたまま眠ってしまった子供のように、じっと動かない大瀧がいた。 「大瀧!」 重尾は大瀧を外に出した。大瀧の後ろにもたくさんの花が敷き詰められていて、それが一面に広がった。 重尾は冷え固まった大瀧の体を抱きしめた。 「ごめんな。ほんとうにごめんな」 今までたくさん話した。口が悪くて、その日あったことを逐一報告に来る男。目がキラキラしていて、なんにでも興味を持ってくらいついてくる男。そんな男が、何を語ることもなく、静かに、横たわっている。 重尾は大瀧の体を横たえて散らばった花をかき集めて体にふりかけた。 「絶対に、迎えに来るから、待っててくれな」 しばらく涙を流していた重尾は、やがて、頭上に監視カメラがあることに気が付いた。
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