濱井

2/6

38人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
もっとみんな外に出してあげればいいんだよ。すぐに彼氏くらいできそうなもんだ。  濱井は、イベントホールが改装されていることに気が付いた。以前仕事で入った時よりも天井が高くなっているし、古ぼけたじゅうたんがなくなっている。 「なんか、会場、きれいになりましたね」 チーフに話しかけてみた。きびきびとよく動くアラフォー女性だ。濱井の事を気にいってくれている。 「そうよ。ほら、もうすぐ、フラワーフェスがあるでしょ。あれに今年は海外の偉い人がくるの。自分の国でも花を使った観光イベントをしたいから視察なんだって。その人を囲んだ夕食会の会場に選ばれたの。だからいい機会だと思って、改装したのよ。素敵でしょ」 チーフは自分の家を自慢するように言った。 フラワーフェスは、この町独自のイベントだ。ゴールデンウィークが終わって梅雨に入ると観光客が減ってしまう。ここは温泉熱を使った花の栽培も盛んだから、その花を町中に飾って楽しんでもらおうと企画され、好評のため長く続いているものだ。 「いいすね。明るくなりましたよ」 「うれしい。濱井君、今日は婚活パーティなんだけど、よかったら残らない? イケてる男の人が足りないのよ。参加費はいらないから」 「あー、このあと、車戻さなきゃならないんで、すみません」 「残念。また、よろしくね」 「こちらこそ」 作業を終えて、濱井は店に帰った。もう誰もいないようだ。今日は店じまいがずいぶん早い。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加