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マドレは、濱井が持ち帰った赤いスプレーバラの束に触った。
「あ、持って行ったんですけど、会場の雰囲気に合わなかったんで。」
「そう・・・だから入れてもらえなかったのね。かわいそう」
マドレは赤いスプレーバラを一輪むしって手のひらにのせた
「いや、その花が悪いんじゃなくて、会場が全然雰囲気変わってたんですよ。なんか、海外の偉い人が来るから改装したって言ってました」
「ふふ。そうらしいわね。イスラ・コン・ティキの大臣さんでしょ。やっと来るのね。待ちかねたわ」
「ああ、えっと、そうですね」
イス・・・ラ・・・?
やっと来る?
なんだなんだ?何者だ、この人。
濱井は、マドレと呼ばれている彼女のことを、お金持ちの愛人か何かだろうと思っていた。趣味と税金対策で店を出してもらってる人。そうでなければこんなゆるい経営でやっていけるはずがない。おかげで濱井もゆるい働きで給料がもらえているのだが。
だけど、もしかしたら、俺が思っている以上に大物とかかわりがある人なのかもしれない。今の会話、訳ありな感じがプンプンした。
手のひらでちぎった花びらをむしりながら転がしてる雰囲気も、いつにもましてフェロモンが出てる。
こわ。
濱井は残りの花を急いでショーケースに戻した。
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