重尾

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高橋さんは、キステロ女にカーソルを合わせた。すると彼女の後頭部画像は3D化した。 「これと同じ後頭部を、何万と言う防犯カメラの映像から探した」 「探した?」 「最近のカメラはクラウドで管理されているからな。それに法律も変わっただろ。俺たちは、その気になったら令状なしで路上その他のカメラ映像にアクセスできる」 改正テロ対策法の事だ。テロリスト対策のため、警察の権限が強化された。そのため交通管理局が設置している公道のカメラをはじめ、商業施設など公共の場所にあるカメラは、いつでも閲覧することができるようになった。 重尾が言いたかったのは、法律上の問題ではなく、気力の問題だった。本当にこの人は何万ものカメラの映像を拾い出したのだろうか。いくらAIが仕事をしてくれると言っても、まだそんなことまで自動化してはくれないはずだ。 高橋には今一つ通じなかったようだが。 「・・・それで、でてきたんですか」 「ああ。二件ヒットした」 「キスしてたんですか」 「いや、路上を歩いていた」 「あの・・・路上くらい歩くでしょう」 「上司の話は最後まで聞け。途中で茶々を入れるのは悪い癖だぞ、出世が遅れる。次に、その画像の周辺で、変死したものがいないか調べた」 「はい」 「すべてヒットした。電車への飛び込み、高所からの飛び降り。状況だけ見れば自殺だ。しかしどちらも殺しても死ななそうな人間で、その人間が死ぬことで喜ぶ者がいた」
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