シラユキ

4/12

38人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
リュウセイは一応花屋の店員だけど、働いているところを見たことがない。気付いたらいなくなっている。何度か遊びに誘われたけど、シラユキはリュウセイの遊び場が苦手だった。リュウセイのことを気にしている女の子からにらまれるのも怖かった。 マドレの様子はモニターから見ることができない。マドレはこの家で一番偉い人だから、マドレの部屋にカメラはついていない。でもマドレも多分寝てると思う。マドレは若いころにたくさん働いたから、今は眠っていることが多い。 シラユキがそっと部屋を覗くと、たいていやさしい顔をして眠っている。長い髪は黒くてつやつや。目じりにしわが刻まれているけど、肌は柔らかくて滑らかだ。自分ではもう年だって言ってるけど、マドレはすごくきれいだと思う。テレビで見る女優さんなんかより、ずっときれい。 シラユキはマドレの顔を見るのが好きだ。トントンとドアを叩くと、やさしく答えてくれる。ベッドのそばに行くと、マドレは優しく髪をなでてくれる。 マドレはシラユキをかわいいと言ってくれる。いい子だと言ってくれる。 とてもうれしい。私はかわいい。私はいい子。 マドレがそう言ってくれるんだから、まちがいない。 でも、ほんとうにそうなんだろうか。私はかわいい女の子なんだろうか。 シラユキは突然不安になる あの男の人は、私をかわいい女の子だと思ってくれるだろうか。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加