中田

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3  ☆   ☆ なぜこんなことができるのかは分からない。他の人にはできない事なのだと、なかなか気づけなかった。 子供の頃は勘が鋭すぎると気味悪がられていた。 振り向くタイミングが早い。 振り向かずに相手に返事をする。 顔を見ていないのに誰なのか分かる。 ほんの一瞬タイミングが早いだけでも、人は違和感を抱く。だから、話しかけられるまでは返事をしないように心がけるようになった。 それは、自分を必要以上に無口にしてしまうことだった。 相手の存在に、自分の方が先に気づけばいいのだ。そう考えて誰彼構わず先に声をかけることもやってみた。かなり疲れる。人並みに見える振る舞いを習得するのに思春期の時間を費やしたようなものだった。 球技は得意だった。相手がパスをするつもりなのかゴールを狙おうとしているか分かる。誰にパスするつもりなのかも瞬時にわかる。運動能力が追い付いていたら一流のスポーツ選手になったのかもしれない。 いや、でも、やっぱり無理だっただろうな。自分の一瞬の動きに相手が違和感を覚えたら、俺は動けなくなってしまうから。
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