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4 ☆ ☆
「中田さん、いい加減あのテスト、やめてくれませんか? どうせ当たるし、あほみたいだし」
「能力の測定は常にやっておかないと。いざって時に使えなくて困るよ。それに、俺が楽しい」
「ほら、結局面白がってる」
重尾の能力を知っているのは中田と上司の高橋だけだ。この二人ならば話しても大丈夫だと思えた。
「今日は、休暇?」
「いや、実は、仕事です」
「え?最近なにか事件あったっけ?」
「はは、そこは守秘義務ですね」
「守秘義務。かっこいいね。捜査は順調?」
「順調だったら、こんなところに来ませんよ」
「なるほど、そりゃそうだ。」
中田は、少女のような微笑みを浮かべた。この人は何も変わらないなあ、と重尾は思う。
浮世離れしている。
聞けばびっくりするような大学を出ているのに、それを生かそうとする様子もない。
能力はある。
重尾の能力を知った中田が行った実験には、すべて意味があった。視線を感知できる距離、視線を受ける角度による感じ方の違い、距離によって変わる視線の強さ・・・それらの実験は、重尾が自然に他人と接する上での客観的なデータとなった。
意図に気づいた重尾は、素直に感謝の言葉を口にした。
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