中田

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「ありがとうございます」 「いいよ。お礼なんて。ただの暇つぶしだよ」 その時に中田が浮かべた笑顔は、今のものと全く変わらない。重尾は思わず現状を洗いざらいしゃべりたくなった。その衝動を危うく抑えた。 電車に飛び込んだ男と、転落した女子高生。関連があるに決まっている。  さっきの女子生徒の顔を見たか? 桐島と言う教師をかばっているだけではない。私たちが、山田サラの死に関連付けられるのは不本意だと訴える表情だった。例の、亡くなった男性の家族もうちのは何があっても自ら死ぬような人間ではありません、と名乗り出てきたという。たぶん、同じような顔をしていたんじゃないのか?  悲しいとか、後ろめたいとかじゃなくて、不本意だったのだ。 二つの点は、必ず結びつく。その線の上に、あのシラユキちゃんも、たぶんいる。 「ニエベス」というあの花屋には尋常でない量の監視カメラがあった。自分の名字も知らない女の子がいた。 全てを関連付けるのが、俺の仕事なんだ。
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