桐島

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あの会話も、急ぎの仕事を抱えながらそれなりに対応していた時の、ちょっとしたものだった。 不思議ちゃんっていうんだろうか。あたしは猫の言葉が分かるんです、と言い出すような、素っ頓狂な子。 ほんのちょっとだけ地面から浮いた状態で歩いているような危うさは、『わざと?』とほかの女子から眉をひそめられるようなあざとさもあった。 そういえば、放課後いきなり前髪をおでこの真ん中でばさりと切って、実習農場の前に立っていたこともあった。 「かわいい?桐島先生」 「ちょ、おまえ、どうしたそれ、朝はそうじゃなかったろ」 「切っちゃった」 「どこで」 「教室だよ。自分で切ったの。かわいいでしょ」 きゃはははは、と笑って、清涼飲料水のCⅯかと言いたくなるくらいの角度に足をまげて飛び跳ねてからスキップして帰っていった。ウサギみたいな動きだった。 「何あれ」 「サラよ。サラ」 「ああ・・・きっしょ。」 と、農場横の自転車置き場にいた女子たちが声を潜めもせずに吐き捨てた。唖然として見送る桐島の後ろでやり取りを見ていたベテランの渡辺先生が言った。 「桐島、気をつけろよ、あの手の女子はヤバいからな」
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