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「何かお探しですか」
やっと言えた。のどが詰まって、思っていたよりずっと小さい声になってしまった。
「この白い花、なんて花ですか?かわいいから気になって」
彼は店先の片隅に置いてあった小さな鉢植えを手に取った。花に顔を近づけて、においをかいだ。
「スノウ・ホワイトです。」
何とかしゃべれた。
「スノウ・ホワイト。はじめて聞いたな。あ、値札が付いてないですね」
しまった、とシラユキは思う。この花は秘密の花。
売ってはいけない。でも、ブーケを作るときには、ほんのすこしだけ混ぜておくようにと、マドレから言われている。
「そうしたら、あの人が気付くかもしれないから。」
マドレはそう言った。
「あの人って誰?」
シラユキが聞き返したら、マドレはうっすらと笑って、答えてはくれなかった。ただ、こう言った。
ーーーこの花は、秘密の花なのよーーー
「あの、あの、この鉢は売り物じゃないんです。」
「そっか。売り物じゃないのか。残念。でも、いい香りだな」
花の中に顔を埋める勢いだったのでシラユキは思わず言った。
「その花、毒があるんですよ」
「ええ!!」
彼は大げさに顔を背けて見せて、また笑った。
「嘘ですよね」
「いえ、本当です。毒っていうか、夢を見るっていうか・・・あ、でも見てるだけなら大丈夫です。口に入れるといろいろ・・・」
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