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シラユキ
1 ☆ ☆
リュウセイを、地下街の出口で拾った。駅からはだいぶ離れているけど、お兄ちゃんの指示は守らないと、姿を補足されてしまう。
地下街から出てきたリュウセイは、ぼさぼさの前髪と黒ぶちメガネをかけて背中を丸めているからちょっと笑ってしまう。
「何笑ってんだよ」
シラユキの隣の座席に腰を下ろしたリュウセイは、ジーンズのポケットからアイコスを取り出した。
「車の中で吸うな」
運転席の男が低い声で言った。
「アイコスだよ」
「アイコスもダメ」
リュウセイは舌打ちをしてアイコスをポケットに戻した。
「ユキ、どっかで飯食おうか。」
「お弁当買ってくれてるんだよ。いいにおいするでしょ。チキン南蛮弁当」
男は黙って助手席に乗せていた弁当のビニール袋を指さした。
「俺は外で食べたいな」
「ええー。お弁当もったいないよ。じゃあさ、リュウセイの分マドレに上げるから、リュウセイ外で遊んできなよ」
「なんだよそれ」
「マドレは部屋にいるんでしょ。だったらマドレとあたしがお弁当を食べて、リュウセイが外で遊んで来たら、何も無駄にならないじゃん」
リュウセイはぷいっと窓の外を見た。あたしといっしょにぶらっとしたかったんだろうな、とシラユキは思った。
でも今日はそんな気分ではなかった。マドレの顔が見たかった。
リュウセイのスマホが震えた。画面を見た流星が言った。
「飛んだみたいだ」
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