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2 ☆ ☆
結局リュウセイは遊びに行ってしまった。
シラユキは二人分のチキン南蛮弁当を持って『ニエベス』に帰ってきた。店には濱井さんがいると事前に知らされていたから、シラユキは外階段からこっそり自分の部屋に入った。
しばらくすると、マドレが上がってくる足音がした。シラユキはお弁当を部屋の隅に置いてある電子レンジにかけた。
「シラユキ、おかえりなさい」
「マドレ、ただいま。濱井さんと何話してたの?」
「ふふ。怖い話をしてたの」
「怖い話? どんな?」
「昔殺した女が笑いながら白い花束を持ってやってくる話」
「それほんとに怖い話じゃん」
「ふふ。本当にあった怖い話・・・じゃないわね。これから起きる怖い話」
「なにそれ。変なの。お弁当あったまったよ。食べよ」
「ありがとう」
マドレは、自分のチキン南蛮弁当の半分をシラユキの弁当の上にのせた。
「やったぁ」
シラユキはぺろりと平らげた。
「昔もさ、こうやってマドレのお弁当もらってたね」
「あら、覚えてる?」
「覚えてるよぉ。あたしは小さいお茶碗持っててさ、それにマドレが自分のお弁当のせてくれて、食べてた。あの頃も半分こだったね。あのお茶碗どこに置いてきちゃったんだろう」
「置いてきちゃったわね。どこかの、暗い部屋に」
「・・・うん」
ああ、そうだったなあ、あれは忘れた方がいいことなのかもしれない。
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