重尾

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『ニエベス』は当然閉まっていて、三階に明かりが灯っていた。あそこにシラユキがいるのだろうか。重尾は周辺にあるクラウドで確認できそうな防犯カメラと、店に独自に設置されたものの位置を確認した。店周辺には歩道に設置されたカメラが一台、交通管理局が車道の交通量を測るためのものが一台、店が独自につけたと思われるものが店の入り口、裏の通用口、店の駐車場につけられている。 重尾は、歩道をぶらぶらと駐車場まで歩いた。車体に『ニエベス』と書かれた店舗用の車両と、が置かれている。花の仕入れや配達に使うのだろう。『ニエベス』だけの駐車場ではないようだ。ファミリーカーが駐車場に入ってきて、母親と子供が二人降りてきた。カメラから視線は感じない。 重尾は駐車場をショートカットする通行人を装って車両に近づき、GPSをそっと取りつけた。道路を挟んだ向かい側に、『ニエベス』を監視するのにちょうどいい位置にある喫茶店も見つけた。古びたビルの二階にあるその店で重尾はホットサンドとコーヒーを頼んだ。メニューがそれしかなかったのだ。 家路につくサラリーマンが幾人か、小さなテーブルに一人ずつ座ってコーヒーを飲んでいる。家に帰る前にちょっと気分を切り替えるために立ち寄っているようだ。 旅行者風の重尾に、店主はちょっと目を止めたが、そのような客もよく来るのだろう。『ニエベス』が良く見える窓辺の席に腰を下ろす。
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