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6 ☆ ☆
「ところでここ女性の店員さんもいますよね」
カメラから目線を移して、重尾は濱井に聞いた。
「うーん、女性の店員・・・小川さんの事かな? 俺の近所の人で、忙しいときに何べんか手伝ってもらったんだけど、子供さんがほら、中学で野球始めちゃったらそっちに時間取られて、全然これなくなっちゃったんですよ。いい人だったんだけどなあ」
「そうじゃなくて、高校生くらいの」
「ええっと・・・もしかして、ユキちゃんかな。あの子知ってるの?店員って言うより、店主さんが預かってる子なんですけど」
「あ、そうなんですか。高校生?」
「いや、学校は行ってないね。親が放置してるから、ここで預かってるって聞いてますよ」
なるほど。自分の名字も知らないシラユキちゃんは、やっぱり学校にも行ってない。
「呼んだら降りてくるかなあ。呼んでみましょうか? ユキちゃーん」
「いや、ちょっと待って」
重尾はあわてた。まだ心の準備ができてない。
「ダメダメ、ユキちゃんに知り合いなんて初めて来たから。呼びますよー」
「いや、ほんとちょっと待って」
何を言ってるんだ俺は。呼んでもらった方がいいはずなのに。
「ユキちゃーん。降りてきて」
濱井が叫び終わるのとほぼ同時に、店の裏手から彼女が姿を現した。
「うわびっくりした。早!!」
濱井は驚いていたが、重尾はそりゃそうだと思っている。ずっとこの展開をシラユキは見ていたのだから。
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