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「あの、こんにちは。」
シラユキはか細い声であいさつをした。かわいい声だと重尾は思った。
そんなことに気を取られている場合ではないのだが、黒い髪のつややかさや瞳の光に、目を奪われてしまう。
「こんにちは。この前は素敵な花束をありがとう」
「え、ユキちゃん花束作れたの?俺見たことないよ」
濱井がまた驚く。
「手伝ってもらったの。あの・・・この人に」
シラユキは、重尾のことを何と呼んだらいいのか分からなかった。シゲって呼ぶのは違うって言われたけど・・・
「お客さんに手伝わせたら駄目だよ。教えてやる。そこ、ヒマワリがあるだろ、持ってきて」
濱井に促されて、シラユキは店の奥にあったバケツ一杯のヒマワリを持ってきた。
「これ、ちょっと育ちすぎた花。これなら好きに使っていいよ。」
鮮やかな黄色のかたまりが現れて、思わず重尾は声をあげた。
「うわー。こういうの、今はいいけどすぐ傷んじゃうから売り物にできないんですよね」
「お、詳しいですね」
「花屋でバイトしてたんですよ。」
「なるほど。じゃ、俺よりうまいかもですね。あ、こら、ユキちゃんそんなにぎゅっと握ったらダメ。ヒマワリは茎が柔らかいからつぶれるよ」
「え、そうなの?」
シラユキが何本かまとめて握りしめていたヒマワリの茎は見事にぺっちゃんこになっていた。
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