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そうだ、とシラユキは思う。私とこの花は同じ名前。『ブランカ・ニエベス』もシラユキっていう意味だ。
「何か関係あるのかな?」
ちがう。この花とは関係ない。私に名前を付けてくれたのはお兄ちゃんだ。私が生まれたときに雪が降ったから「シラユキ」
私が生まれた島は、めったに雪が降らないから、そうつけたんだとお兄ちゃんは言った。でも、どう説明したらいいんだろう。私は自分が生まれた島を見たことがない。
沈黙が続いたところで濱井が助け舟を出した。
「気に入りました? 」
「はい。とても。このスノウ・ホワイトって、珍しい花ですね。見たことないや」
「でしょ。ホレさんっていう人の農園から直接仕入れてるんです。店主のお気に入りで、絶対ブーケ作るときには入れてくれって頼まれてます」
ホレさん・・・
重尾の頭にスッとスイッチが入った。あの女子高生が窓から飛び降りる前、実習に行っていた農園主ではないか。
「スノウ・ホワイトって、そこの農園にしかないんですか」
「うーん、それはよくわからないけど、ホレさんとこの農園では、今花ざかりだよ。見に行きますか?」
濱井がにこやかな笑顔のまま言った。
「え。いいんですか」
「うん。せっかくだから。お客さんなんて来ないし。ユキちゃんも行くでしょ。どうせリュウセイは寝てるからさ」
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