シラユキ

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    5   シラユキがおろおろしていると、彼が後ろからのぞき込んできた。 「一回水の中で茎を切った方がいいよ。そのはさみ、借りていい?」 「ど、どうぞ」 彼は水を張ったバケツの中で茎を切り落とした。 「だいたいこういうところに置いてるんだよなあ」 といいながらラッピング用の紙やリボンを探し出して、勝手に使って、器用に花束を作った。 「ほらできた。俺、昔花屋でバイトしてたから」 「そ、そうなんですか」 「うん。きつかったけど、楽しいバイトだったなあ。・・じゃ、これをください」 「はい、どうぞ」 「いやいや、どうぞじゃなくて、売らないと」 「え・・・売る・・・売る?」 「そうだよ。これ、いくら払えばいいか教えてくれないと」 「えっと・・・五百円」 「え、うそ、それヤバいよ安すぎる。きみバイトでしょ、店長さんに怒られるよ」 そうなんだろうか。シラユキは現金で買い物をした経験が、実はあまりなかった。ものの適正な値段も知らない。でもこうなったら仕方がない。 「大丈夫です!」 「ほんとに?じゃ払うけど、後で怒られたらごめん」 彼は財布から500円玉を出してシラユキに手渡した。シラユキはそれをぎゅっと握りしめた。 「こんなに安いんだったらまた来てもいいかな」 「ほんとですか」 思わず大きな声が出た。声のボリュームが変だったんだろう。彼はおかしそうに笑った。 「うん。絶対来る。しばらくここに滞在する予定だから。また来るよ」 そう言って、店を出て、なだらかな坂道を降り始めた。
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