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マドレが男をつつくと、むにゃむにゃとつぶやきながら寝返りを打った。
「まだ効いてるみたいだから、ささやいてみて」
「分かった」
リュウセイが男の耳元で
「家に帰れ」
とささやくと、男はガバリと体を起こして周囲を見回した。リュウセイは一瞬身構えたが、男の目には何も映っていないようだった。
「駅は分かるな」
うなずいた
「じゃあ帰れ」
男はカバンをつかんで部屋を出ていった。
「すごいわねえ。あなたの言葉、必ず効くのね」
「ふつうはこうじゃないのか?」
「ええ。元々、キスだけじゃ無理だったのよ。一晩じっくりとろかしてから聞きだしていたの。でも、これのおかげでそんなことしなくてよくなったわ」
マドレは白いクリームケースを取り出して手のひらで転がした。
中に、魔法の毒薬が入っている。たった今リュウセイとマドレは、毒の効き目を試したついでに、男のキャッシュカードを暗証番号ごと抜き取ったのだ。
やり方はこうだ。
クリームケースの中には半透明のクリームが入っている。あらかじめ、マドレは口中にクリームを含み、それをリュウセイに口移しをして共有しておく。
そしてターゲットの男にマドレが口づけをする。毒によって陶酔している男の耳元にリュウセイがささやく。低く、有無を言わせないささやきで指示を出すのだ
ターゲットは操り人形のようにリュウセイの『指示』に従う。さっきのターゲットはキャッシュカードの暗証番号をすらすらとしゃべってから眠りこけた。
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