リュウセイ

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リュウセイは、自分が転がり込んでいた女友達が売春をしていることを知ったときの胸の痛みを思い出した。少女が生き延びるすべに、毒を選ぶのが正しいのか、リュウセイには分からなかった。でも、マドレの思いは理解できた。 「俺は、ガキとキスなんかしないぜ」 「あなたがいいと思うまで、待つわ」 あんなガキとキスをしたいと思う日が来るだろうか。まだずっと先の話だ。 しかし、時間はあまりなかった。クーデターによって焼き払われ、銃声と悲鳴に満ちた町を逃げ回った記憶は、マドレの心を少しずつむしばんでいった。悪夢にうなされることが増えるにつれて、「毒」の効き目が悪くなっていった。 あるいはマドレの魅力が加齢とともに衰えてきたせいなのかもしれない。 「あたしでもやれるよ」 シラユキが強いまなざしでリュウセイにそう言ったのは、彼女が十四歳の時だった。リュウセイは、シラユキの唇に、そっと自分の唇を重ねた。 それから二人は最強のペアになった。シラユキが口づけした男に、リュウセイが囁く。それだけで思い通りに動かすことができた。 俺たちは、きちんとコントロールできている。そう思っていた。 でもなぜ、俺たちはあっさり一線を越えてしまったのだろうか。 なぜ簡単に、「飛べ」と言えたのだろうか。顔も覚えきれないくらいたくさんの男を殺してしまったんだろうか。
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