リュウセイ

15/20

38人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
リュウセイは、マドレの部屋を訪ねた。ドアを開ける。 「ちょっといいか」 返事はなかった。中をのぞき込むと、マドレはドレッサーの前に座って髪をとかしていた。いい女だ。何度も唇を重ねるうちにぐらりと引き込まれそうになったこともある。 だけど、やっぱり怖い女だ。 リュウセイに背を向けて、マドレは髪をといている。ドレッサーに映る表情を、リュウセイは見ることができない。流れるような黒髪を丁寧にすきながら、彼女は何を考えているのだろう。 「入るぞ」 「あなたが私の部屋に来るなんて珍しいわね」 リュウセイのほうに向きなおって、マドレは微笑んだ。四十歳になるかならないか、正確な生年月日は自分でもわからないと言っていた。しかしそうは見えない。その気になってメイクすれば二十歳でも通用するかもしれない。 しかし、化粧っ気のないマドレの眼の下には灰色のクマができている。加齢と、背負ってきた苦しみと、もしかしたらスノウホワイトの毒のせいかもしれない。 マドレの素顔を見ると、リュウセイはぞくっとする。早くシラユキを連れてここを出なければならない。 「話があるんだ。お前たち、やるつもりなんだろう?」 「やるつもりって、なんのこと?」 「とぼけるなよ。あんだけ武器をため込んでるんだ。近いうちに使う気だろ?フラワーフェスティバル。違うか?」 マドレはうっすらとほほ笑んだ。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加