リュウセイ

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「ええ。国の英雄なんてとんでもない。全部その男が仕組んだことよ。あたしだけじゃないわ。ボスも、ホレさんも、みんなあいつを憎んでる。ボスの奥さんと娘さんは火のついた家の中で焼き殺されたわ。娘さんはまだ3歳よ。ホレさんはやっと自分の農場を持ったばかりだった。でも、最初に畑に埋めたのは種じゃなかった。自分の両親と、従業員の遺体。あたしも・・・。あたしはこんな仕事をしてたから、親も兄弟も手紙すらくれなかったけど・・友達はいたわ。いつか年季が明けたら、ためたお金で何をしようかって。そんな夢みたいなことを話す友達がいたの。みんな死んだ。目の前で撃ち殺された。だからね。言わないといけないの。あたしたちは生きてるぞ、て。次に死ぬのはお前だって」 真っ白だったマドレの頬に血の気がさして、目がキラキラと輝き始めた。リュウセイは思わず目をそらした。憎しみが人を美しくするなんてことが、あるんだろうか。 「それにしても、うまいこと来てくれたもんだな」 「呼び寄せたのよ。花の香りにつられたの。スノウ・ホワイトは、あいつにだって忘れられない花なんだから。この花を使って何をしていたか、」
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